新型コロナウイルスの感染拡大以降、テレワークが急速に普及するようになりました。ワークポートが2019年8月に行った調査では、テレワークの経験がある人は約10%でしたが今では全国平均でも40%近く、東京では70%以上の人がテレワークの経験があると言われています。緊急事態宣言が発出、解除されてから半年近くが経過しますが、今もなお長引く感染拡大への懸念を踏まえてオフィスを手放し、勤務体制を常時テレワークに切り替える企業も増えています。この1年間で働き方が大きく変化したという人も多い中でいま話題になっているのが、慣れない長期的なテレワークによって心身の健康に不調をきたす“テレワーク疲れ”です。これは年齢や役職に関係なく多くの人が悩まされており、中にはこれまで問題なく働いていた人がテレワークを始めてから休職を迫られるまでに不調をきたしてしまったという例もあります。原因や程度は人それぞれですが、今回は多くの人に当てはまる主な原因とその対策をご紹介します。テレワークは人の目がない分、自分の体調に意識を向けて負担の少ない自分流の過ごし方を確立することが大切です。ぜひ参考にしてみてください!
“テレワーク疲れ”を引き起こす主な原因と対策
プライベートと仕事の切り替えができていないことによる「働きすぎ」「無気力」
テレワーク疲れを引き起こす原因のひとつに、プライベートと仕事の境界が曖昧になってしまっていることが挙げられます。オフィスで仕事をしていたときは出勤のために身支度をしたり、電車に乗って自宅に帰るという通勤の工程を踏むことで、無意識のうちにプライベートと仕事の切り替えができていましたが、テレワークでは通勤や環境の変化がないため意識の切り替えるためのきっかけがあまりありません。時間やオフィスの設備によって強制的に残業を切り上げられたりすることもないので、常に仕事モードで休息が不足したり、いろいろ考えて気疲れしてしまう「働きすぎ」の状態に陥ってしまうおそれがあるほか、反対に、気持ちをいつまでも仕事モードに切り替えられず「無気力」になってしまったり、そんな自分に嫌悪感を抱いて落ち込み、負のスパイラルにはまってしまうことも考えられます。
対策
通勤に代わる「仕事とプライベートの境界線」を自分で作りましょう。自宅内で仕事をする空間とプライベートの空間を分ける、仕事始めと仕事終わりのルーティーンを確立するなどが有効です。以下の行動を参考に、自分の生活の中で実践できそうなことを試してみてください!
たとえば…
仕事前に身支度を整える(服装・化粧・髪型)/仕事前後に散歩やジョギングをする/あらかじめ決めた時間を過ぎたら仕事用のパソコンを見えないところに片付ける/仕事中とプライベートの時とで部屋の照明やBGMを変える など

孤独感によるメンタルの不調
これまでオフィスに通勤して、チームでプロジェクトに取り組みミーティングをしながら働いていた人たちにとってテレワークは特殊な環境で仕事をすることになります。上司や部下との対面での会話、それらに付随していた世間話や近況報告、息抜きとなっていた同僚とのランチはなくなり全てオンライン上でのやりとりとなります。現在ではテキストだけでなくオンライン上で対面しながらの大人数でのミーティングも可能になっていますが、長期的なテレワークによって勤務先の企業と自分個人が切り離されているような感覚になり、孤独感が増大してメンタルに不調をきたす人も増えています。メンタルの不調は、オフィスでは同僚や上司経由で「少し様子がおかしい」「以前に比べて元気がない」と気づくことができても、テレワークによってひとりで自宅にいるとなかなか不調を自覚できず、回復までに多くの時間を要することがあります。
対策
テレワークによる孤独感を軽減させるには、上司や部下、同僚と定期的に連絡をとり他者との接点を持ち続けることが大切です。相手の不調に気づいてあげられるだけではなく、自覚していない自分の不調に気づいてもらえる効果もあります。自分が管理職として部下やチームメイトをマネジメントする立場にある場合は、1日に1回仕事から少し外れた雑談をする、週に1回オンライン上で対面して話すなど、様々な方法でコミュニケーションをとれる機会をつくりましょう。その他、同僚とタイミングを合わせてオンライン上で一緒にランチをする、夜にオンライン飲み会をするといったことも効果的です。職場の人とのコミュニケーションのほかにも、SNSなどを通じて共通の趣味や特技をもった人たちと交流したり、友人と連絡をとるのも効果的です。
たとえば…
週に1回同期と時間を決めてオンラインでランチ会をする/久しく連絡をしていなかった友人に近況報告の連絡をする/上司や部下に仕事の連絡をする際に雑談も混ぜる/仕事の進捗や近頃の体調、悩みなどを共有する面談の機会をつくる/趣味を発信するSNSを始める など
運動不足による体の不調
オフィスに通勤する際、多くの人は電車やバスといった公共機関を利用します。揺れる車内で立っていたり階段を使ったりなど、通勤は適度な運動の機会となっています。それがテレワークになると動くのは自宅内のみ。すぐに運動不足の状態に陥ってしまいます。運動不足が続くと肥満や生活習慣病のリスクが高まるほか、肩や足腰に痛みが出て集中力が続かなくなるなど仕事の生産性に支障をきたしたり、ストレスの原因になったりすることも考えられます。
対策
日常の運動機会が少ないテレワークでは、自分で意識して体を動かす時間を作って運動不足にならないよう注意しましょう。先に説明しているように、運動は仕事とプライベートを切り替えるきっかけに活用することもできるので、日々のルーティーンにしてしまうのが効率的です。自宅内でできる運動を盛り込むもよし、外の空気を吸う機会にするもよし。突然ハードな運動を毎日繰り返すのは体への負担が大きいので、無理のない範囲でできることを考えましょう。
たとえば…
仕事を始める前にストレッチポールを使って体をほぐす/仕事前後に自宅のまわりを1周ジョギングする/自宅でできるヨガやピラティスの動画を活用する/バランスボールに座って仕事をする/お手洗いに立ったタイミングなどに簡単なストレッチをする/スクワットをしながら歯を磨くなど日常の動作に運動を取り入れる など

今回はテレワーク疲れをしないために気をつけるポイントをご紹介しました。新型コロナウイルスの感染拡大以降、今後の働き方や生活スタイルについて改めて考えを巡らせる人が増えて、最近はテレワークの有無や頻度を転職先の条件として重要視する人も増えてきています。生産性の高いテレワークを健康的に続けるためには、これまで以上に自分の体や心の声に耳を傾けて、ときに厳しく、ときに甘やかしながら管理していくことが求められます。また、部下をマネジメントする管理職の人にとっても、これまでとは違った管理の難しさが伴っています。出勤によって無意識に行われていた意識の切り替えや運動不足などを、自分流に補って快適に過ごせるテレワークライフを組み立てていきましょう。